オートマトン
人工知能が搭載された自律型移動端末。
現行のシェアは阿賀野エンタープライズの関連会社である阿賀野重工のAT-06型系列がその殆どを占めており、オートマトン=AT-06型という認識が社会通念化している。
このAT-06型の基礎理念には、国合の研究施設〝ラボ〟が開発したオートマトンMT-01の存在が大きく関わっており、阿賀野はそのライセンスを購入し量産レベルまで再設計する事でAT系列が誕生したという経緯を持つ。
AT-06型の特徴としては、その整備性の高さと拡張性の高さ、そして他の機種にくらべコストが非常に安価という点にある。これらはMT-01型からの大きな変更点だ。
故に派生やマイナーバージョンの存在も多く、軍事目的のモノだけでも
市街地戦仕様 :06P
砂漠地戦仕様 :06D
寒冷地戦仕様 :06R
湿地戦仕様 :06M
支援作業仕様 :06HW
国合軍採用型 :06FS
自衛軍採用型 :06FJ
など、バリエーションが富んでいる。
また、先行量産型を06A、初期量産型を06C、中期を06F、後期量産型F-2としているがいずれも原型機体のAT-06として一括りにされる事も多い。
民間での利用も普及しており型番はAT-06SW。
郊外でのパトロールやごみ収集などを目的として巡回しているタイプで、戦闘力は無く、出力も低い。兵装はもちろん、各部装甲も外されている為、その気になれば拳銃やバットでも対応可能な耐久力しか持ち合わせていない。
犯罪やテロなどの有事の際は通報をし、可能であれば対象を尾行、得た情報を警察などに送る。
マフラー小僧の噂
一年程前から阿賀野区近辺の学生の間で流行っている謎のヒーローに関する噂。
「街の不良を裁くヒーロー」として語られている。
事実かはともかく、複数人の不良相手に一方的に勝負がつけられる程の喧嘩の腕前を持っているとされている。
常に赤いマフラーと黒いコートで姿を隠している為、その素性は一切が不明。
呼び名は様々あり、マフラー小僧という名前も、その中の一つに過ぎない。
近しい噂話として〝白兎の噂〟があるが、マフラー小僧の噂はあくまで阿賀野区の学生の間に流行っている程度の噂話でしかなく、白兎の噂のような全国規模で報道されている分布規模の広い存在ではない。
また、マフラー小僧は単に街の不良を裁くヒーローとして語られているだけであり、神出鬼没の怪人として語られる白兎とは毛色も違う。
ミスファイアの噂
『尊厳維持装置を使い、死んだはずの人間を町中で見かけた』等の噂から広まった都市伝説。
これといった根拠はなく、ただの噂でしかない。
自爆を行った死体は基本ミミズが回収するが、後に葬儀目的等であれば遺体返却要請をする事ができる。
しかし、刑事事件等の関与の疑いや疫病の疑いがある場合はその申請が通らない場合もある。
この様にどこに行ったのかが不明な遺体の存在がある事から『ミスファイア』や『死人還り』等の噂がたったのだと推測されている。
また、メメントの経典内にある、尊厳死した人間が転生し、神の命へと至れるという教えが、影響を与えているのではないかという一部週刊誌の報道もある。
阿賀野エンタープライズ
消しゴムからロケット、学校、病院、軍事産業、建築、農業、通販、ITビジネスに至るまで、ありとあらゆる分野に進出している世界トップクラスの大企業。
関連グループを合わせれば先進国の平均GDPの二割をゆうに超える年商を叩き出す圧倒的パワーを持つ。
国合からの認可を得た唯一の企業で、世界中の尊厳維持装置の生産も請け負っている。
一方で部下の数は世界中の支社を合わせて二〇〇人程度しかおらず、オートメーション化を徹底している。
阿賀野の異常なまでの急成長は、現社長の金剛寺春人の存在によるところが大きい。
阿賀野の一社員でしかなかった彼は突如、阿賀野の株を買い占め社長に就任すると、務めていた社員の九割以上を様々な理由をつけてカットし、その分全ての費用をAIとオートマトンの開発に費すと、大半の開発スタッフの入れ替えを行った。
そうして阿賀野独自のスタンドアローンラインシステムを完成させると、設計から出荷までの全てをオートメーション化し、結果として一代で瞬く間に中流企業の阿賀野を世界トップクラスの会社としてしまった。
顧客の欲しい機能をネットアンケートで調査、集計し人気なものからAIが設計、そのまま工場でアンケートの割合に応じた数を出荷するという徹底的な機械化主義を貫き、配送もAIによる自動運転を用い昼夜問わずの配送を可能にした。
店舗は最低限のショールームとして留めるなど、徹底してマンパワーに頼らない姿勢を貫き、この商売戦略はAT革命として世界に影響を与えた。
一方の、この機械化主義に対し『人間アレルギー』等と批判を寄せるものも多い。
進駐軍/国際協和連合強制執行軍
通称国合軍(日本国内で活動する在日国合軍は進駐軍という呼ばれ方もしている)。
国合の参加国家による警察機構。
国際憲法の元、非軍事的措置では対応不十分と判定された場合、使用される軍隊。
国際憲法では、国合法を犯し平和を乱す対象に対し、軍事的強制措置をとり、安全の維持、または回復する為の必要な行動をとる事ができると規定されている。
私立金剛寺学園
物語のヒロインや主人公たちが通う学校。
阿賀野区学園都市中央に本部を置く学校法人。母体はオートマトンや尊厳維持装置の開発、生産を手がける大企業、阿賀野エンタープライズ。
阿賀野区学園都市中央に本部を置く総合学園。
幼稚舎、小中高等学校、大学、大学院を有している。
人口激減期に各種教育機関の統廃合が進められる中、各地方に教育の拠点を作るべく学園都市構想が持ち上がった。
その中で阿賀野エンタープライズが、自らの膝元である阿賀野区に存在した由緒あるが廃校寸前だった学園を土地ごと買収し、学園都市構想に名乗りを上げた。
コンペを勝ち抜き、学校法人金剛寺学園を設立。
その設立理念は『公教育では実現できない教育を、未来の世代へ』である。
その後、圧倒的資金力による教育水準の高さから学生が集中し、現在の規模にまで急成長した。
人権宣言
国際協和連合が尊厳維持法制定時に行った宣言。
『自らの生死の選択権こそ人類の最大にして最小の人権である』
という声明と共に人類尊厳維持法の制定を行った一連の宣言を指す。
当時の反発は凄まじく導入予定国では暴動や内戦にまで発展したが、国際憲法の元、国合軍が介入し各国の軍と共にこれを鎮圧した。
また、尊厳維持装置によって人口問題、介護問題、雇用問題、終末医療、いじめといった大小様々な問題が解決するとし、国合は、この法をもって世界はより尊厳に満ちた世界に前進するとした。
人類尊厳維持法/死ねる権利
人類尊厳維持法、俗称『死ねる権利』。
十年前に国際協和連合が加盟先進国に向け施行した新たな法であり、人類の新たな権利でもある。
自らの命に対する決定権として交付された。
尊厳維持装置という爆弾を脳内に埋め込み、本人の声で『死にたい』と言う事で起爆する。
この法により人々は苦しまず、いつでも気軽に自殺を行う事が出来るようになった。
死にたい人間は死に、死にたくない人間は生きる。
人口問題、介護問題、雇用問題、終末医療など、このシステムによって、世界はより効率的にアップデートされた。
こうして尊厳維持装置により、死とは遠くにある畏怖ではなく、身近にあるヤスラギとなった。
独立機動隊
独立機動隊/国際協和連合強制執行軍太平洋方面極東支部首都治安維持第101独立機動隊
通称101独立機動隊、もしくは独立機動隊。
国合参加加盟国の首都治安の維持を目的として作られた部隊群の一つ。
参加加盟国は国合の治安部隊を国内に置く事が義務づけられている。
該当国の内にいながらにして該当国とは別の指揮系統で動く事ができる文字通り独立した機動力を持つ治安維持部隊である。
この部隊群の成立経緯は二通りの説があり、国際協和連合成立時に起きた抗争で共同戦線を張っていたドイツやロシア、日本の特殊部隊が国合軍に編入されたという説と、当時流行し分散していたPMC企業を買収しドイツ、ロシアの部隊を中心に再編成し後に日本の部隊が編入したという説がある。
中でも日本の首都治安維持を任せられている101独立機動隊は、成立時にGRU所属下の特殊任務部隊による直々の訓練を受けており、部隊の練度も高く装備も常に最新式のものが採用されている。
日本の警察や自衛軍ほど複雑な手続きを踏む必要がなく、国際憲法に則ったケースであれば最低限の決議で武力介入を行なう事ができる。
故にテロや事件に対し、日本の警察や自衛軍よりも攻勢的に対処を行う事ができ、人権宣言に伴う暴動が起きた際にもその鎮圧に大きく貢献をした。
現在の部隊長はナインシュタイン・フォン・ナイチンゲール。
反尊厳維持装置組織の最大の天敵であるとされており、彼女が就任してからは以前にも増して行動が数段迅速になっている。
白兎の噂
ここ数年世間を賑やかす正体不明の存在。
兎の様な耳のついた兜に白い鎧を纏った騎士とも、白金のロボットであったとも目撃証言は様々。
街中には彼が残した痕跡も多々残っており、若者の撮影スポットにもなっている。
彼は反尊厳維持装置集団〝組織〟──つまりテロリストの一員であるとも、正義の味方であるとも、連続殺人事件の犯人であるとも、某国の構成員であるともただの愉快犯であるとも噂されている。
反尊厳維装置集団/組織
人類尊厳維持法に対し反対意識を持つ人間で構成された組織。表向きは大手建築会社を装い、それをフロント企業としている。
台頭したのは二年前の金剛寺学園大学付属病院襲撃事件から。
一般にはその存在を秘匿されているが、国際憲法におけるテロリストの認定をされている。
組織の最終目標は尊厳維持装置の不可逆的停止。
その為に組織は〝停止コード〟と呼ばれる緊急停止プログラムのキーや、〝爆破不良者〟〝政府による他者の強制自爆〟といった不良の確固たる証拠の入手などを目的にしている。
人権宣言を巡る内戦で解体された〝国合に対する反抗集団〟の残党などが中心となって立ち上げた。
アメリカなどの所謂〝国合に参加しない大国達〟から支援を受けているのではないかという噂もされている。
尊厳維持装置
人類尊厳維持法、俗称『死ねる権利』と呼ばれる法が日本国に施行されてから、国民の頭には針状の爆弾が埋め込まれている。
この爆弾こそが『尊厳維持装置』である。
自殺を無痛かつ効率的に突き詰めた装置で、脳内にある針状の爆弾本体と、音声認識を備えたカードのついたブレスレットが起爆装置になっており対になっている。
針状の爆弾は脳幹付近に存在し、腕につけた起爆ブレスレットに使用者の声で『死にたい』と言う事で十秒後に起爆する。
死ぬ為の効率を最大限突き詰め、痛みを感じさせる事もない死への恐怖を最小限に抑えたシステム。
Quality of Death
──元々は緩和ケアや終末期医療などにおいて『死を迎える人の痛みや家族の苦痛を和らげる医療システムがどれだけ整っているか』といったことを指す言葉であった。
医療が高度に発展し死に難くなった現代において医学に求められる役割が延命や対処療法といったCureから、健康の為の地域連携を基盤とした持続的支援を行う包括的Careのシステムへと変遷した。これが地域包括ケアシステムである。
特に日本では過去に行き過ぎた延命至上主義において、健康寿命と平均寿命の格差が深刻となり、医療費を圧迫していた。
人類尊厳維持法の制定前後、『ただ生き延びること』よりも『より良い最期を迎えること』が求められるようになり、尊厳維持装置の普及は世論に強く後押しされた。
その後の技術革新において、率先したAIによるビッグデータ管理や医療現場におけるオートマトンの配備、生体医工学の発展による筋電義手など世界に先駆け様々な取り組みを経て、トップクラスの医療先進国へと変貌した。
これにより医療施設で看取られていた最期の時を古き時代の様に、家族に囲まれ家で看取られることが可能になり、医療費も大幅に削減された。
しかし身体の健康管理が向上した結果、浮き彫りになったのは自殺率の高さである。
現代において、自殺は決して否定されるものではない。実際、人類尊厳維持法の制定後の自殺率急上昇は、殺人や強盗といった重篤な犯罪発生率の減少や幸福度の上昇などと擬似相関を示している。だが、それがどんな意味を示すのか社会は議論を深めていない。
ある著名な精神科医は次のように警鐘を鳴らしていた。
『人は幸福に慣れすぎると、少しの不幸も許せない。誰も彼らが死んだ理由は誰にも解らない。
どんな些細な理由も死に繋がりえるのが現在の世界だ。ビニール傘が盗まれたから、自転車のカギを忘れたから、ひょっとすると家に財布を忘れたなんて理由でも死んでしまえるのかもしれない。
それはきっと怖いことだ』
未だ我が国は精神保健、福祉の領域を軽視し、その重要性に気が付いていないのかもしれない──
とあるWebニュースより抜粋。なお元の記事は削除済みである。
金剛寺学園大学付属病院
阿賀野区全体の地域拠点病院として位置づけられる巨大な総合病院。
地域包括ケアシステムを維持する拠点でもある。
尊厳維持装置で自爆した遺体はここへ搬送させられる。
旧来の拠点病院よりも更に広い能力を有し、通常の医療業務の他、研究機関や尊厳維持センター、医療行政機関なども敷地内に有している。
国際協和連合
ソビエト社会主義共和国連邦を構成していた国家の一部と、80年代に国際連盟から脱退した日本、インド、ドイツ、ブラジル等によって国際連合と同等の共同体を目指し結成された共同体。
『戦後から脱却をし、いずれかの国が主導権を握るのではなく、理念と思想が意思決定を下す幸福と進歩を目的とする共同体』
という意思の元設立された。
国家や人種、宗教観などを超えた次世代の倫理観を尊重し、それゆえに常任理事国の概念がない。
『国際憲法』による自律を基本とし、多数決ではなく国合裁判による法治を謳っている。
だが実態としては設立に関わった日本やロシアといった国の意向が未だ強く反映されておりその事を指摘する国際的批判も後を絶たない。
また、国際憲法はあくまで参加国に対してのみの効力しかなく、権威の広げ方としては国際連合の国際裁判所の方が未だに力の対象は広い。
国際連合とは連立した関係にある。
2000年代に『人類尊厳維持法』を施行。
『自らの生死の選択権こそ人類の最大にして最小の人権である』という言葉と共に人権宣言を行った。
阿賀野区学園都市連続殺人事件
阿賀野区学園都市にて現在発生している一連の殺人事件の総称。
ナイフのような刃物で首を一切りといった非現実的な犯行の手口や、被害範囲が阿賀野区内と限定されている点から警察では同一犯による連続的犯行という見方が強い。
尊厳維持装置の登場以降、殺人事件の件数が減少傾向ある現代において、この事件は非常にエポック的な事件として世間を賑わせている。
何故犯人はこのような手口で犯行を重ねるのか、何故男性ばかりを狙うのか、一切の犯人像が不明であり、そういった不鮮明な部分も様々な憶測を呼んでいる。
被害者が男性に限られている事から、何らかの怨恨を持った者の犯行ではないかとも噂されている。
ある著名な犯罪心理学者が当犯行に対し「現代社会に対する風刺として作られた芸術品である」とコメントした事も波紋を呼んだ。
また、発見された遺体の写真がSNSなどで拡散など、警察の情報管制も後手に回っている状況である。
一年前から未だに増え続けている被害者の総勢は三十人以上に上るとも言われており、世界のアップデートを謳う人類尊厳維持法が制定されて以降最大の被害者件数となっている。
死体回収屋ミミズ/尊厳死者搬送医
尊厳維持装置の対存在としてその死体を回収する専門業者。
世間では〝ミミズ〟の蔑称を与えられている。
これはとある流行した小説の『蛆だの死出虫等と揶揄してやるなよ。よく見ろ、死体にこそ群がってはいるが、あれこそこの人間世界の土壌に必要な虫ではないか。なれば、あれは死出虫ではない。余程ミミズだ』という一文が由来とされている。
正式な名称は『尊厳死者搬送医』であり、名目上は公務員であるが、実態は尊厳維持装置を与えられない障碍者や社会不適合者の受け皿となっている、という噂がある。
彼らは街を巡回しており、自爆遺体を速やかに回収し所定の医療機関へ搬送する事や、感染症を防ぐため現場の清掃等を主な業務としている。遺体は専門医の下で解剖され臓器提供が行われる。
臓器提供は尊厳死を行った時点で義務となっており、国が発行する〝自殺の手引き〟にも記されている。
自殺の手引き
国が発行する〝自殺の手引き〟には、
『尊厳死を行う際には目玉や血液の飛散を防ぐため、目をつむる事を推奨す』
『尊厳死を行う際の場所は禁止指定箇所を除いて自由であるが、国が指定する尊厳維持装置使用推奨指定区域を利用する事を推奨す』
『尊厳死を行った場合、遺体の所有権利は日本国に移り、臓器提供や検体としての提供を義務とす』
『希望がある際、遺体は規定期日内に返却し葬儀等を行う事ができる(尚、所有権は日本国が保持したままであり、刑事事件や感染症の疑いがある場合などの特殊な事情がある場合を除く)』
などが明記されている。
集団埋葬施設
自爆遺体の保存期間は49日とされており、返還の手続きは遺族充ての自爆通知公布から10日間以内となっている。
その期間を過ぎた遺体、もしくは返還不要の意思表示があった遺体はこの集団埋葬施設に埋葬される。
この施設は毎年数を増やし全国の様々な場所に拠点を構えている。
また、所謂霊園や墓、埋葬地は現代でも多く文化として残されており、返還要請のあった遺体はそちらに埋葬される事が多い。
臓器提供
尊厳維持装置による自爆者は、自爆時に臓器提供の意思表示とみなされ、その全員が臓器を摘出される。
それに伴い現代では、尊厳維持装置を埋め込む7~10歳の間から臓器移植の意思表示が可能としている。
これは国が発行している『自殺の手引き』にも明記されている。
尊厳維持装置作動後、自爆者は急行した尊厳死者搬送医──ミミズによって回収され、脳死状態の確認、肉体の延命をされながら尊厳維持センターに搬送される。
その後、臓器摘出資格を持つ病理医によって臓器が摘出され、速やかに所定の検査を行い、電磁式過冷却潅流装置を用いてこれを過冷却保存する。
遺体は期間内に返却要請があれば返却され、無ければ集団埋葬施設に送られる。
保存された臓器は適合するレシピエントが見つかり次第、移植される。
過冷却保存装置の発展により、虚血許容時間が飛躍的に延長し、それ以前と比べ10倍から、臓器によっては100倍近い保存期間を実現とした。
以前の様に摘出手術と移植手術を同時に行う必要がなくなり、移植手術はレシピエントの体調を優先しフレキシブルな対応が可能となった。
またゲノム創薬、分子標的薬による免疫抑制、AIサポートによる移植手術の効率化といった医療革新もあり、臓器移植のリスクが激減した。
無論、拒絶反応が全く起こらないわけではないが、早期治療で対応が可能であり、重症化する症例は極稀である。
再生治療も可能であり、それを希望する患者も存在する。だが、細胞の3Dプリンティングは移植に比べ非常に高価で困難な手法であり、両者の免疫、感染といったリスクも大差がない事から、保険適用である臓器移植が主流となっている。
この十数年で移植医療を取り巻く事情は劇的に変化し、臓器移植は今や身近なものとなった。
臓器提供者、ドナーは毎日現れ、その都度臓器が収集、保存される。
我が国では、今、臓器が余っている。